先日、現役引退を宣言した浅田真央選手。
彼女が残した ”神演技” は いくつもあるけれど、最も印象に残っているのは、やっぱりソチ五輪のフリー演技だろう。
フィギュアスケートの面白いところは、たった約4分という短い時間に、その選手の挑んできた”人生”が凝縮されているところなんですよね。
浅田真央選手が人生をかけて挑み続けた「大技への挑戦」。
その集大成となった、ソチ五輪の演技について語ります。
BGMにこちらをどうぞ。笑
2014.2.22 mixiにて執筆
ソチ五輪。またしても伝説を作った浅田真央選手。
予感していた通り、神様は彼女にオリンピックの金メダルを与えてくれなかった。
それどころかショートで信じられないミスを2回もプレゼント。
一体、彼女にどれだけの試練を乗り越えさせれば、気が済むのか。
本当に神様が存在するとすれば、きっとこう言うだろう。
浅田真央という人間に、金メダルは必要ない。
そんなものなくても世界中から尊敬され、愛される事が出来る世界でたった一人の人間なんだから。
ショートの大失敗でメダル争いというプレッシャーから解放された彼女が成し遂げた事。
オリンピックチャンピオンは4年に1度誕生するが、
人類の歴史で、この先彼女と肩を並べる女性が現れるのだろうか。
彼女がやり遂げた、「エイトトリプル」には、それだけの重みがある。
突然出てきた言葉で普通の人はナニソレ?で終わってしまうと思うが、これだけは伝えておきたい。
本来なら今季のグランプリシリーズから挑戦して、失敗を繰り返しながら完成させるはずだったものを、ぶっつけ本番の1回で成功させてしまった。
神様は彼女の努力をちゃんと見ていてくれて、味方してくれたに違いない。
浅田真央は確かに2度のオリンピックで金メダルを逃した。
でも彼女はそのどちらでも間違いなく歴史を刻んだ。
1度目は、女子のプログラムで3度のトリプルアクセルに成功。
2度目は、全種類の3回転を含む、8回の3回転ジャンプに成功。
最後にエイトトリプルについて説明しておこう。
どうせ、テレビをつけたって誰もちゃんと褒めてくれやしないんだから。
フィギュアスケートには全部で6種類の3回転ジャンプがある。
点数が低い方から順に、
トーループ (3T)
サルコウ (3S)
ループ (3Lo)
フリップ (3F)
ルッツ (3Lz)
アクセル (3A) の6種類だ。
そして1回の演技の中で、同じ種類の3回転ジャンプを飛ぶ時は、片方をコンビーネションの連続ジャンプにしなければならない。
そう、つまり、1つのプログラムで8回の3回転を入れると言う事は、
①トリプルアクセルを含む、全てのジャンプが飛べる事。
②トーループとループの両方を連続ジャンプのセカンドジャンプで飛べる事。
※セカンドジャンプで飛べるのは人間の構造的にトーループとループだけ。
という2つの高い壁が立ちはだかるのである。
①はいうまでもないが、過去に安定して成功できた選手は伊藤みどりと浅田真央だけだ。
実は何気に②もそれと同じレベルに難しい事なのだ。
そもそも連続ジャンプの2つ目にループが付けれる選手というは、男女含めて一握り。
私の知る限り、
浅田真央、安藤美姫、スルツカヤ(ロシア)、ソトニコワ(ロシア)、織田、ケビンレイノルズ(カナダ)
くらいじゃなかろうか。
もしかすると、真央ちゃんってトリプルアクセルが不調だから、エイトトリプルとかレベル下げた構成にしたんでしょ? とか思われるかもしれないが、
元々予定していた 3A + 2T = 8.5 + 1.4 ⇒ 9.9点
今回飛んだ 3F + 3Lo = 5.3 + 5.1 ⇒ 10.4点
ドサクサに紛れてレベル上げてるからね(笑)
蛇足だけど、キムヨナとソトニコワ選手が飛んだ 3Lz + 3T = 6.0 + 4.1 = 10.1点 なので、
ソチ五輪の最高難度ジャンプは真央ちゃんってことになります。
つまり、「8トリプル」という言葉は、
女子ではほとんど飛べない、トリプルアクセル
男女含めて一握りしか飛べないセカンドループ
そのどちらも成功しなければならない驚異のプログラムということなのです。
そういうわけで浅田選手が成し遂げた偉業がおわかりいただけたかと思います。
本当に今年で現役引退してしまうのだろうか?
せっかくここまで上り詰めたのに、もっとたくさん演技を見せて欲しいという気持ちはヤマヤマですが、彼女は充分すぎる程に色々なものと戦ってきましたからね。
彼女がまだ戦い続ける道を選ぶのか、第2のスケート人生を歩き出すのかはわかりませんが、オトナの事情にまみれた採点競技という地獄の中で成し遂げた偉業は、
世界中のスケートファンの間で後世まで伝説として語り継がれる事でしょう。