新年あけても株式市場は安定しませんねぇ。
任天堂も例外なく、すっかりポケモンGO祭りの上昇を食いつぶしてしまう水準まで来てしまいました。
こうなるともはや1企業の業績などお構いなし、という状況ですが、
それは置いておいて、任天堂の状況を考察してみようと思います。
まずは、昨年(2017)度の実績を表にしてみました。
2017年度(2Q) | 2017年度 | 推定売上高 | |
売上高 | 3700億 | 1兆500億 | (計)1兆1000億 |
ハード(Switch) | 490万 | 1500万 | 4500億 |
ソフト(Switch) | 2200万 | 6300万 | 3800億 |
ハード(3DS) | 280万 | 640万 | 960億 |
ソフト(3DS) | 1400万 | 3500万 | 1750億 |
推定売上高欄は、以下の係数で算出。
ハード(Switch)→30000円 ソフト(Switch)→6000円 ハード(3DS)→15000円 ソフト(3DS)→5000円
任天堂製品の平均価格を意識してみたところ、ほぼ実際の売上高と一致しました。
実際の所は、ダウンロードソフトはもっと低価格ですし、amiiboやスマホ収入が考慮されていないので、あくまで参考値でしかないですが・・・
さて、これを基準に、今年度の途中経過を考察してみましょう。
2018年度(2Q) | 2018年度(予想) | 推定売上高 | |
売上高 | 3900億 | 1兆2000億 | |
ハード(Switch) | 500万 | 2000万 | 6000億 |
ソフト(Switch) | 4000万 | 1億 | 6000億 |
ハード(3DS) | 100万 | 400万 | 600億 |
ソフト(3DS) | 630万 | 1600万 | 800億 |
2Qの公表値と、通年の期初予想を並べました。
昨年と同じ係数で考えると、期初予想1兆2千億は、Switch事業だけで達成可能な金額であることが読み取れます。そうなると問題は、switch2000万台、ソフト1億本という高いハードルを越えることができるか?が焦点になってきます。
ハード(Switch)
昨年実績と比較すると、2Q時点で、ハードの売上はほぼ拮抗してます。
ということは、今年度も、最低ラインで1500万台は達成可能でしょう。
年末商戦の「Wii超え」報道などの勢いも感じますので、2000万台はギリギリ達成可能かもしれません。
ソフト(Switch)
注目したいのがソフト事業。2Q時点で、昨年度ダブルスコアに迫る勢いを持っています。そのまま昨年同様に、通年で「2.8倍」という結果を掛け合わせるだけでも1.1億本と10%上方修正となります。さらに今年は「ピカブイ」「スマブラ」がアマゾンや楽天のランキング上位を独占したり、”過去最速の売れ行き”という公式発表もあったことを踏まえると、Switchソフトの上方修正はほぼ間違いない状況かと。
3DS
一方、今年度はやはり、3DSの落ち込みが激しいようです。
昨年度は一応、「ポケモンウルトラサンムーン」による追い風がありましたが、今年度は、ほぼ無風です。恐らく、ハード200万、ソフト1000万程度が限界なのではないでしょうか。
売上高にして800億。昨年度から2000億近いマイナスとなります。
新春セールなど過去作品の販売でどこまでカバーできるか?がポイントになりそうです。
総合評価
Switch事業がソフトを中心に大きく売上を伸ばしている事は間違いない。
それが3DSの落ち込みと、ハード目標のやや力不足状態をどこまでカバーできるか?
ハード=トントン
ソフト=絶好調
3DS=失速
結果として、期初予想付近に着地する公算が高そうです。
ダークホースのOnline課金
と、ここで上手く纏まったと思いましたが、2018/9よりスタートした、
「オンライン課金」という隠しキャラも忘れてはならない存在です。
Splatoonやマリオカート、スマブラなどを世界中の人々とオンライン対戦するには、スイッチオンラインの加入が必須となりました。主流の年間契約で2400円です。
仮にSwitch販売台数を3500万台とし、50%が加入したと仮定して、
1750万人 × 2400円 = 420億
これは、昨年度のスマホ関連売上に匹敵する金額です。
これらの「デジタル収益」分野を足し合わせると、意外と3DSの穴を埋めて、携帯機市場を引き継ぐ、2本目の柱に成長するかもしれませんね。
2018年決算予想まとめ
任天堂は昔から業績予想がかなり保守的(控え目)だったにもかかわらず、今年度は珍しく、ハード2000万台という大風呂敷を広げてきました。「NintendoSwitchは売れてるんだぞー!」とアピールとする一方で、見込みの立てにくい「デジタル収益」をヘソクリとして業績予測に含めていなかったかもしれませんね。多少Switchが見込み通り売れなくても、通期の営業利益は確保できる算段を置いていたのではないかと。
逆に言えば、ハード2000万台の大風呂敷を本当に消化できてしまった場合、大幅な上方修正もあるのではないか、という事になります。
ただし、保守的な任天堂のことですので、3Qの上方修正は「ない」と思います。あるとしたら、3Q時点で売上高1兆円を超えてくるような年末商戦大フィーバーが起きている場合で、配当も跳ね上がる事になりますが、元々の目標が高いので、そこまでは難しいのではないかと・・・。
目下の株価は世界情勢に巻き込まれてダダ下がりですが、今期の減配はほぼありえない状況かと思いますので、利回2.5%の優良投資と開き直って放置しておきたいところですね。
さて、続いて2019年度以降はどうでしょうか。
投資としては、次年度以降も少なくとも1兆円の売上高をキープしていけるか?が重要かと思います。
まずはここまでのSwitchのソフトラインナップを振り返ってみましょう。
※WiiUのデラックス版を除く完全新作からビックタイトルのみ抽出
2017年
3月 ゼルダの伝説 ブレスオブワイルド
7月 Splatoon2
10月 マリオオデッセイ
12月 ゼノブレイド2
2018年
3月 星のカービィ スターアライズ
4月 任天堂Labo
10月 マリオパーティ
11月 ポケモンLet’sGOピカブイ
12月 スマブラSPECIAL
任天堂自身、ハードウェアとは、遊びたいソフトのために”仕方がなく買って頂くもの”という認識を持っています。
WiiUの失敗は、このハードルを越えられなかったためと分析しているのでしょう、
Switch発売前後には「戦略的なソフトラインナップ」を全面にPRしていました。
その戦略が見え隠れするように、2017年と2018年のラインナップ、ちょっと特徴的です。
2017年 ⇒ ゲーマー層を狙い撃ち。
ロンチとして選ばれたのが、まさかの「ゼルダの伝説」。
ゲーム好きの中ではその名の通り「伝説」級の人気作品ではありますが、任天堂キャラクターとしては一般受けは弱く、売上も爆発的ヒットは見込めないソフトです。
また、Splatoonも今でこそ人気タイトルの仲間入りを果たしましたが、WiiU時代は、ゲーム実況などで盛り上がりはしたものの、「隠れた名作」止まりでした。WiiUスルー組にとっては満を持しての登場となりました。
「マリオ」もネームバリューは抜群ですが、オデッセイのような3Dアクションゲームは、実は売上はそれほど多くありません。マリオといえば、花形は横スクロールアクションなのです。歴代ソフトも横スクロール系は3000万本規模になりますが、3Dアクションは1000万本止まりです。(オデッセイもやはり、1200万本程度)
このラインナップから察するに、2017年のロンチ年には、しっかりとゲーム好きな人々にアピールして地盤固めをしたかったのだと思われます。いきなり一般層に火が付くと、DSLiteのような品薄戦争になってしまう事を避けたかった意図もあるかもしれません。
2018年 ⇒ 小中学生のクリスマスプレゼント
明らかに年齢層を下げてきました。
ラボをはじめ、パーティゲームも出してきたりと、小中学生にも楽しめるソフトが一気に増えました。また、ポケモンLet’sGoに関しても、本来の訴求力である戦略的な対戦要素を封印し、非常にシンプルな環境に戻してきました。その結果、いわゆる廃人さんにはリーチできていない一方で、初めてポケモンをプレイする子供達にもわかりやすいエントリーモデルとして仕上げてきた印象です。
そしてトドメとばかりに、ゲーマー・小学生どちらにもアピールできる「スマブラ」の投入。
2018年のサンタさんの大半が、これをおねだりされたのではないでしょうか。
まさに、任天堂の筋書き通りの展開と言えます。
過去の任天堂のハードでも、ここまできれいな販売戦略が練られたことはなかったと思います。この流れで、2019年はどこに向かうのでしょうか?
2019年 ⇒ お父さんお母さんも一緒に遊ぶ
すでに発売が予告されているソフトは「どうぶつの森」「ポケモン最新作」の2本です。
両者の共通点は、30代にも潜在顧客を持ったソフトだという事です。
クリスマス需要で買ったソフトも一通り遊びつくされてSwitchの稼働も少なくなったころ・・
折角買ったんだから、私たちも久しぶりにゲームしてみようかな?
そんな親御さんを狙ったようなラインナップを用意してくるのではないでしょうか。
今時の小学生の親は、まさにスーファミやポケモンブームの中心にいた世代ですからね。
どうぶつの森、言わずもがなメインターゲットは大人の女性たちです。
今はLineツムツムを遊んでいる人たちがこぞってSwitchに流れてくるポテンシャルを秘めたソフトと言えるでしょう。
ポケモン最新作、こちらはサンムーンの正統後継版として、対戦の深みも復活すると思います。初代赤緑のブームを経験した子供たちが、今やパパ側です。よっぽど厳格な家庭でない限り、この世代の男子は一度くらいはポケモンで遊んだことがあります。ポケモンGOで戻ってきた人もいれば、子供達がピカブイで遊ぶ姿を懐かしく思っている人もいるのでは。
「よし、パパも久しぶりに本気だしちゃおうかな」
そんな声が聞こえてきそうです。
ちなみに、今年の夏のポケモン映画、「ミュウツーの逆襲」の続編のようですね。
初代ポケモン好きだった人にはDNAレベルで刻み込まれた名作です。特報映像を見るだけで血が沸騰するような興奮です。昔好きだったわ~という人すら「見たいっ!」と思わせる訴求力がある唯一のポケモン映画だと思います。
今年これをぶつけてくるあたりも、かなりの戦略を感じます。
2020年 ⇒ ゲームを超えた電子ツールへ昇華
Switchのこれまでのラインナップを見ると、意図的に外されているシリーズがあるように思います。
WiiSportsやWiiFit、脳トレ、NintenDogsといったような体感型ゲームたちです。
WiiDSの大ブーム支えた立役者たちですが、それらが一本たりとも公表されていないというのは、逆に不自然ではないでしょうか??
実はSports/FitゲームはWiiU版もありましたが、鳴かず飛ばずのままひっそりと終わりました。「出しゃ売れる」という簡単な世界じゃないことは人気シリーズを大事に守りぬいてきた任天堂自身が良く知っている事でしょう。忘れたころに「あー!懐かしいっ」と手に取ってもらえる様にチャンスを伺っているのではないでしょうか。
ところで、岩田社長が亡くなられてから、すっかり耳にしなくなりましたが、
「QOL(Quality of Life)向上プラットフォーム」という謎の新事業の存在を憶えている方はいますでしょうか。
株主QAにて、岩田社長自身がこのように語っておりました。
「当たり前のもの(万歩計や体重計)が、アプリケーションの力で化ける。」
「楽しく継続できる力、そういうところに任天堂の強みが見いだせる」
「ノンウェアラブルというのはリビングルームで使うものとは限らない」
脈拍などのセンサーを用いた何かではないかなどと憶測が立っていましたが、
これは「持ち運べる」「多種多様な周辺機器と接続可能」なSwitchとの相性が抜群なのでは?
当時「NX」と呼ばれていた現Switchをはじめから意識していたのか、全く別軸の開発だったのかはわかりませんが、これらのアイデアと体感ゲームを織り交ぜたSwitchソフトが再び健康ブームを巻き起こすかもしれません。
時に、2020年は東京五輪も開催されます。まさに”健康”が意識される抜群のタイミングになりそうです。
ソフトラインナップまとめ
向こう数年間は戦略的ソフト配置を意識的に計画しているものと思われます。
「ゲーマー → 子供達 → 家族 → 全世帯」という導火線に沿って綺麗に普及する見事な計画です。
(恐らく生前の岩田社長の計画を淡々と遂行しているのでしょう。)
このままSwitchのハード売上が順調に進めば、向こう2~3年は売上高1兆円の確保は安泰に思えます。
任天堂の歴史上、携帯ゲームは定期的にモデルチェンジをして販売台数を稼いできました。
ゲームボーイカラー、DSLite、3DSLL、などです。
一方、据え置き型ゲームは原則、1世代1モデルという販売プランでした。
果たして、携帯/据え置きのハイブリット戦略をとるNintendoSwitchはどちらに舵を切るのか?
今後の売上を大きく左右するこの問題について考察していこうと思います。
が・・・
思いのほか既にかなりの長文になってしまいました、、、
一旦、この辺で1記事に止めておきます。
後半戦、しばらくお待ちください。。m(_ _)m
お待たせしました、2か月のスパンを開けて、やっとこさ後半戦にたどり着きました。
こちらになります。
続編楽しみにしています!
決算でましたね。1700万台に下方修正ですか。。まぁそうですよね。
ニンテンドーダイレクトもまだやらないし、何も材料ないとただただ不安です⋯⋯